The technology of Nuclear Medicine : From Kyushu

特別講演・基礎講座

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特別講演

Clinical Decision Makingと心臓核医学
― 心筋血流定量評価の臨床的意義 ―

済生会二日市病院内科顧問・新古賀病院
名誉院長 福山 尚哉

 1960年代に開発された心臓核医学検査は心筋血流の有無を画像評価することにより虚血性心疾患の診断に広く応用されてきた。その後の数多くのevidenceにより、心筋虚血の有無のみならず、虚血範囲の大小や虚血の重症度が疾患の予後に関与することが確認された。また近年のPCIやCABGなどの冠血行再建治療の効果が虚血の範囲の改善度によって決定されるということも明らかになってきた。さらにPETによるCFR(coronary flow reserve)の定量評価により、冠動脈の形態的な狭窄の有無によらず、長期予後の推測が可能となった。また一方で最近臨床応用されるようになった圧ワイヤーによるFFR(fractional flow reserve)測定が予後予測とPCIの効果判定に有用とのことで普及し始めた。

 従来の冠動脈狭窄の程度によって適応が決定されてきたいわゆるanatomicalな評価による冠血行再建は、長期予後の改善が期待できないとの報告が相次ぎ(COURAGEなど)、心筋シンチ(MPI)やFFRなどを参考にしたphysiologicalな評価の有用性が認識され、physiological interventionという考え方が普及してきた。さらにMPIによる心筋虚血の半定量法を発展させ、CFR(またはMFR=myocardial flow reserve)の定量法が普及すれば心筋の虚血の定量法としてFFRよりもさらにすぐれた指標となりうる。半導体検出器の普及により、SPECTによるMFR定量が日常臨床で可能となる時代が近づいてきている。

 本日はCFR(MFR)とFFRの違いやその有用性、そして日常臨床におけるCFR測定やFFR-CTの将来などについて報告したい。

 

PET検査の将来と定量性

九州大学大学院医学研究院 保健学部門 医用量子線科学分野
教授 佐々木 雅之

PET検査は脳の機能や代謝を測定する研究用装置として開発された。当時は、機能や代謝をいかに正確に測定できるかの定量性が重要な課題であり、多くの科学者たちが開発にエネルギーを費やした。その後、代謝測定が癌の診断に利用できることが明らかになると、形態やサイズに依存しない新たな癌画像診断としてブームとなった。この頃は、患者の負担軽減と検査の効率化のため全身を短時間で検査することが課題であった。また、測定結果の定量性よりも、画像の見やすさや読影のしやすさが課題となった。検査の多くは微小病変の検出が目的であったため、優れた病巣検出能であっても100%ではないことは、熱狂的なブームの冷却ともなった。逆に注目されるようになったのは治療の効果判定やモニタリングでの利用である。治療後に見られる腫瘤が腫瘍の残存か瘢痕組織かの鑑別に代謝診断が有用であることがわかり、悪性リンパ腫では国際的な治療効果判定基準にPETが取り入れられた。さらに、癌の治療効果はサイズの変化よりも代謝の変化が先に起こることや、分子標的治療ではサイズの変化を生じないものがあることが分かってきた。代謝診断が新たな指標として期待されている。

代謝診断は生体内の酵素などの分子の機能を測定する分子イメージングであり、この代謝測定は癌のマーカーとなりうる。世界的に各種の画像診断をマーカー(画像バイオマーカー)として利用する検討が進んでおり、治療効果判定やモニタリングで威力を発揮すると期待される。さらに、治療効果や予後の予測に重要として注目されている腫瘍不均一性は、腫瘍内の不均一性、病巣間の不均一性を部位ごとに検討すべきであり、画像バイオマーカーでなければ評価できない。PET検査が画像バイオマーカーとして確立するには、いつ、どこで、だれが、何のために、どう撮影しても、同様に判定できる結果が得られなければならない。PET装置の本質的な役割は生体内の放射能分布を正確に測定することであり、このため、PET検査の定量性が重要な課題として再び注目されている。得られる結果の反復性repeatabilityと再現性reproducibilityが優れてなければならない。また、施設や装置を超えて検査方法を統一化する標準化standardizationに加え、さらに結果を同じ基準で比較するための調和化harmonizationの試みもなされている。

基礎講座

ガンマカメラを正しく用いるために必要なこと 頭部編
新人の方、ローテーションで核医学検査に携わる方へ

医療法人春回会長崎北病院
藤下 稔雅

頭部領域での撮像・画像再構成については従前より確立された部分が多く、施設毎に装置性能を考慮した撮像条件・再構成条件を決定されていると思います。また、近年CT装置付きガンマカメラ普及が目覚ましく、吸収補正用CT搭載装置では正確な吸収補正を与えられ、診断用CT搭載装置では吸収補正の他に形態的情報と機能的情報との融合を同一機器において出来るようになりました。また、解析装置における計算能力の向上により逐次近似法を利用した画像再構成も一般的に使用されるようになり散乱線補正を組み込むことも多くの施設で行われています。更に開口補正なども実装されてきており従前から確立された方法では得られなかった画像を我々は臨床へ提供できるようになりました。

しかし、このような収集方法や画像再構成法の決定の多くの場合は装置導入時に検討されたまま、その後に条件変更などのために基礎検討がなされることは少ないと考えらえます。このため、新人技師やローテーション勤務のかたは設定された条件の決定がどのような根拠や実験をもって決定されたかを知ることは少ないのではないでしょうか。核医学検査においてさまざまな技術が提供されガンマカメラでの定量化は着実に進んでいます。しかし、その技術から得られたデータの補正や画像に対する評価を行って自動で補正・修正する装置はありません。これらの補正・修正は核医学担当者(特に我々放射線技師)の能力に負うところが大きいと思われます。

今回改めて、頭部領域における収集条件や画像再構成について基本を学び、エラーなどに対応する知識を再確認したいと思います。また、核医学装置を使用中に起きた死亡事故なども起こっており医療安全の面からも考察を行い、皆さんと核医学検査に携わる放射線技師の有様を考える内容にしたいと思っております。

核医学診療は今後も皆さんの向学の取り組みにかかっています。

 

ガンマカメラを正しく用いるために必要なこと
精度管理編

九州大学病院
粟元 伸一

核医学検査の大きな特徴として、体内に投与した放射性医薬品の挙動を追跡することにより様々な生理的または生化学的な機能を定量的に評価できることである。

核医学検査の定量的評価法としては局所脳血流量 (regional cerebral blood flow:rCBF)測定におけるTLU(Table Lookup)法やARG(Auto radiography)法等の定量的評価が診断精度向上に重要な役割を果たしている。しかし、その定量値の正確さ、誤差範囲と誤差要因等を正しく評価してから臨床に使用すべきである。近年、医療にはEBM(evidence based medicine)が求められており、SPECT に関してもEBMの概念を取り入れた定量性の向上、標準化は重要な課題である。

核医学検査での定量検査には、クロスキャリブレーションと呼ばれる補正を行うことにより、定量的評価が可能になる。クロスキャリブレーションを行うためには、既知の放射能濃度の溶液を満たした均一ファントムを撮像する。それを画像再構成し、画像の値と既知の放射能の間の比例定数を算出し、再構成した画像にその定数を乗じることにより、放射能濃度(Bq/ml)を持った画像となる。 核医学装置の進化に伴い、局所脳血流量だけではなく各種臓器の定量的評価が可能になってきたが、安定した定量評価を行うためにはガンマカメラの品質管理が適切に行われ、精度が維持されていなければならない。日常の検査においても機器点検を定期的に行うことで、経時的変化を調べることは性能の低下や故障の徴候を早期に発見して、故障を未然に防止するために必要不可欠なものである。

また、核医学検査・治療に使用される放射性医薬品の放射能測定には、ドーズキャリブレータが使用されているが、投与量を正確に測定するためには適正に管理されたドーズキャリブレータが必要である。

本講演では核医学定量検査の精度を維持するために必要なガンマカメラの精度管理に加えドーズキャリブレータ等の保守管理についても説明したいと思います。

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